一次試験。
通過した。
教員採用試験。
埼玉県。
埼玉大学4年細沼敦(あつし)!
あつしは。
合格通知が届いた夜。
大学の近くの公園にいた。
家(実家)もすぐ近くにある。
地元も地元だった。
あつしは。
思い出していた。
中学で野球部。
中3の夏は五番でファーストだった。
あんまり練習に励んだほうでもなかったが。
しかし思い出していたのはライトの関原のことだった。
あつしは。
関原が好きだった。
女の子に見えていた。
あつしは。
科学部に入ろうとした華奢な関原を野球部員にした。
イジメられないようにと。
わざと面白い冗談を言って絡んだ。
サッカー部もバスケ部も。
まあそういうことなのだろうとなんとなく理解していた。
そういえば。
関原は成人式に来なかった。
関原は。
本当に中身が女の子だった。
高校は男子校だったが中退。
県下一の進学校だったが。
水泳が辛すぎた。
17歳で睾丸を摘出した。
借金をしてまで。
あつしは。
関原が。
この公園で。
よく素振りをしていたことを知っていた。
しかし。
照れくさくて。
知らなかった。
あつしは。
素振りをしようと思った。
今日こそ。
ここで素振りをしようと思った。
えらい!
どうしてそういうことをするの!
やったひとがいちばんわかっているはずです!
いろんな色で塗りましょう!
しかたありませんね!となりの子にみせてもらいなさい!
休み時間は何分ですか!
校内放送が聞こえませんでしたか!
時計があるでしょう!
あつしは。
30分間素振りをした。
やがて涙がこらえきれなくなり。
不覚にも。
これで最後にした。
関原君とは普通に接してあげてください・・・!!!
あつしは。
誰も頼んでいないのに。
うずくまって泣いた。
なにをしていたんだろうな。
なにをしていたんだろうな。
むせび泣いていたら。
足音が。
一人で歩いてきて。
ミュール?
手前で止まって。
声だけが。
とても高かった。
おしまい

